「人生は死ぬまでの暇潰し」だけどそれで構わない
「人生は死ぬまでの暇潰し」という衝撃的なセリフに初めて出会ったのはマンガでした。高校生の時だったかな。素通りする人は素通りするセリフに過ぎないと思いますが、当時の僕にとっては大いに引っ掛かったセリフでありました。
ピンポン(1) (ビッグコミックス) (2012/09/25) 松本大洋 商品詳細を見る |
グリーンヒル(3) (ヤングマガジンコミックス) (2000/07/04) 古谷 実 商品詳細を見る |
「う~ん、何てセリフをマンガで登場させるんだ」とも思いました。
マンガ「ピンポン」 ※松本大洋の作品 →「人生は死ぬまでの暇潰し」
マンガ「グリーンヒル」※稲中卓球部の著者作品→「人生は死ぬまでの暇潰し」
このセリフに出会ったときは、個人的には本当にガビ~ンときました。自分が抱いている心情の奥底を的確に表現している言葉に出会ったと思いました。「人生は死ぬまでの暇潰し」は今やネットで検索すると結構ヒットすると思います。ただ、当時はこの種のセリフを言う人は周囲にいなかったし、ネットがそもそも存在していなかったし、テレビでも本でも全く見掛けませんでした。
いろいろ調べてみると、みうらじゅんさんが最初に言語化した説が結構有力です。
人生とは死ぬまでの暇つぶし
出典
みうらじゅん
人は生れ落ちた時、余生が始まる、その余生を有意義にするのがマイブームである
人生についての真実の一端を捉えているだけに毒を多く含んだセリフだと思います。
人生が好転しているときには、目にもとまらず記憶にも残らないセリフです。
人生が暗転しているときには、グッと毒気をもって心に刻み込まれる可能性が高いセリフです。
「暇潰しの人生なんて、さっさと死んでしまおう」なんて勢いよく背中を押された気持ちになってしまいそうです。
「人生は死ぬまでの暇潰し以外のなにものでもない」というのは、模範解答の一つである。それは事実だと個人的には思える。否定しようがないと思うのです。
飯を食うのも暇潰し
彼氏彼女を作るのも暇潰し
会社で仕事するのも暇潰し
家族サービスも暇潰し
寝るのも暇潰し
捉え方の問題を含んでいますが、死ぬことが前提にある以上、全ては暇潰しだという発想です。
金持ちになろうが
成績がよかろうが
エリートサラリーマンになろうが
結婚して子供をつくろうが
一戸建てを購入しようが
出世しようが、独立して会社経営で成功しようが
悪いコトじゃなく羨ましくもあるけど人生的には無価値じゃねえの、という発想です。
映画化もされた小説『バトルロワイヤル』に次の文章があるのを知っている人・注目した人はいるでしょうか?
この文章は『完全自殺マニュアル』という本の前文にも非常に似た共通点があります。
- 作者: 高見広春
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 1999/04
- メディア: 新書
- 購入: 4人 クリック: 86回
- この商品を含むブログ (141件) を見る
俺たちみたいな凡人でも、ときどき、何もかもが無意味に思えることがある。なぜ俺は朝起きてメシを食っているのか。そんなもん食ったってそのうちクソになるだけじゃないか。なぜ俺は学校へ行ってお勉強なんかしているのか。それで万一将来成功したところで、いずれは死ぬんだ。いい服を着て、人の羨望を集めて、あるいは金をもうけたところで、何の意味もない。全く無意味だ。もっとも、このクソみたいな国にはそういう無意味さはふさわしいかも知れないがな。だが、しかし、だ。
俺たちには、楽しいとか、うれしいとか、そんなふうな感情もまた、あるはずだろう。ささいなことには違いないさ。だが、俺たちの虚無を埋めてくれるのは、それなんじゃないのか?少なくとも俺は、それ以外の答を知らない。
この文章には的確かつ代表的な虚無感のカタチが文章化されています。それと同時に虚無感に立ち向かう感情についても触れています。「人生は死ぬまでの暇潰し」という言葉には「人は絶対死ぬ」という前提により二面性があります。
ひとつは、強い虚無感。
ひとつは、達観による楽観主義。
三浦じゅんさんのコトバは、明らかに「達観による楽観主義」に基づいたものだと思います。
どうせ死ぬなら「マイブーム」でも見つけて「人生」なるべく遊びましょ~という価値観。
できれば、「達観による楽観主義」に重点を置きたいですね。
補足ですが、人生は死ぬまでの「暇潰し」のくせに、「暇潰し」の部分は、家庭環境・労働環境・病気などで「凄く過酷なもの」に姿を変えてしまいます。「暇潰しどころじゃない」っていう悲惨な現実は結構人生のあちこちに潜んでいます。人生「ただの生き地獄」ってことも人生の側面には間違いなくあります。
そして、「暇潰し」の部分が楽な人生であったとしても無限に感じるほどの「暇」はどうしようもなく退屈で、過酷さと対極的でありながら「退屈は人を精神的に殺す」という一面を持っています。
いくつかのことを述べましたが、現在辿り着いている人生観としては
「人生は死ぬまでの暇潰し」 だけどそれで構わない
という一歩離れたスタンスで良しとしています。
終了
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★