★★★ユートピア★★★★
『ユートピア』とは『どこにもない世界』
もし、あなたが世界の設定者・いわゆる神みたいな創造主・世界の設計者となれるのならばどんな世界を設定するのでしょうか。
私は、世界の設定者としてすべてを設定することができるものとする。
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XX年、私はかねてから構想していた『ユートピア』を創造した。
私は、設定者として科学の進歩と医療技術の発達を加速度的に進め、人類を有史以来悩ませたきたいくつもの不幸から人を解放した。
食物は品種改良を積み重ねさせた結果、どんな環境下においても収穫可能なものにした。どれほどの人口増加にも対応できるだけの食糧が安定して得られるようにした。飢餓で苦しんでいた時代はもうはるか過去のものである。今日では、アフリカですら大量の食糧を廃棄している。食糧不足が起きえない環境を与えたので、食べ物を粗末にしても社会問題にもならず、家庭でも論議しない問題となった。
人体における遺伝子解析を完了させた。生まれてすぐに、または生まれる以前に、すべての病的遺伝子を取り除くことが可能な医療技術も与えた。だから、病気で悩むものはいなくなった。例外的に病気にかかる人間も存在させなくした。障害児はもう誕生しない。皆が五体満足な健常者として生まれる。精神を病む者も存在しない。精神的にも肉体的にも皆に平等な健康を与えた。
永遠に細胞分裂を繰り返す老化しない細胞を人体に取り込むことも可能にした。20歳、30歳…老化を停止させたい段階で老化を各個人が停止できる。永遠の20歳、30歳を選択可能とした。容貌の衰えや肉体の衰えを気にする者は存在しなくなった。そして、死に至らない細胞を人体に取り込み、人を永遠に死なないものとした。
つまり、人に「死」を与えなくした。そう、人を「永遠に生に留める」こととした。
整形手術を全ての人間に許可した。技術の高度化により失敗は存在しない。好きな容貌、スタイル、声質を平等に与える。「生」を与える段階で、暴力を志向するDNAを欠落させることとし、戦争をしようとする愚者は誕生しない、社会レベルにおいても家庭レベルにおいても殺人や暴行を実行する者はもう誕生しない。すべて排除した。犯罪もすべて排除した。
人の生存を脅かす存在も、自然災害すらもすべて排除した。
人に完全な安楽を与え、生物界の絶対種として君臨させた。
モノの生産や食料の生産は、すべてロボットに担当させることとした。コンピュータ自動生産工場で過不足なく実施させており、人が働く必要はない。地域ごとに配布センターを設置し、各家庭、各個人宅に直接ロボットが供給することとした。ロボットは、生産、営業、事務、企画、サービスのすべてをあらゆる想定状況に沿って遂行できる高度なものを与えた。
人から労働を取り上げることとした。
人から労働という時間の犠牲と精神の犠牲、肉体の犠牲を取り上げることとした。
かつての労働は個人の趣味の範疇とした。労働から解放され、人に完全な自由を与えた。
自由とは、「行動を促す外的要件が何もないこと」である。人を、しなければならないことから解放した。つまり、人に特別にしなければならいことは何もないという環境を与えた。つまり、何もすることはない。何もしなくてよい。何かをしてもよい。時間の潰し方は個人に選択させることとした。人にとって、遊びを最上位のものに据えるよう設定した。
出典33man.jp 江口寿史
コミュニケーション能力については、脳の前頭葉への医療介入により全ての人間が円滑に行えるように設定した。人を、延々とした日常の繰り返しに飽くことなく耐えていけるようにした。
人から「死」を排除し、「永遠に生に留める」こととしたので、人を1000年、10000年…と永遠に途切れることなく実存しつづけるものとした。
人の「意識」・「思考」・「感情」という謎のモノについては継続して与えるか、削除するか 保留とした。人類全体の削除時期については、自分の設定がもたらした結果にもとづいて後で決めることとした。(了)
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