おすすめ小説ベスト30ー僕が30代後半までに読んだ好きな本

無駄の効用・実用の虚像

面白い小説はたぶん星の数ほどあります。でも自分の心に響くような小説には中々出会えないと思います。上記の赤文字言葉は、僕の座右の銘のようなものの一つなんですが、一時期「小説」というものをまったく読まない期間があったんです。というのも「小説は何の役にも立たない、時間の無駄なんじゃないか」と強く感じるようになったから。その思いが強くなり社会人になってからは、小説をほとんど読まなくなり、実用的な仕事関連本ばかり読んでいました。

でも、年齢とともに、「実用的なことを追求していっても得られるものには最終的には限界がある、そしてその追求を続けた努力が必ずしも自分に返ってくる訳ではない」・「むしろ実用を追求することは虚像なんじゃないか」・「無駄にも多くの効用があるんじゃないか」と視点が変わってきて、最近は小説を新たな気持ちで読んでいます。

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無駄の効用・実用の虚像

僕は、残念ながら「人生を衝撃的に変えた小説」や「救われた小説」には出会っていません。
(あえて挙げればヘルマン・ヘッセの「デミアン」には強い影響を受けた一文があります。)

でも、良い小説にはやはり、心の内面に何か(深みとか温かさとか清涼感とか柔らかさとかetc)を形づくってくれるような不思議な効用があると思います。僕は、小説を読むことで「忙しい現実とは別の世界に少しの間、逃げられる?」ような部分を最近は大事にしています。
『表紙を開けば、別世界に一瞬で行ける』という感覚があります。

僕の小説のタイトル読書量は約1000タイトルくらいだと思います。本当はもっと少ないと思います。大体です。その中でのいろいろをランキングから外してのベスト30です。

例えば、東野圭吾は僕は雑だと思うから外します。海外の名作と言われる作品も『イリアス』や『カラマーゾフの兄弟』や『アルジャーノンに花束を』や『グレートギャッツビー』、『華氏451度』や『異邦人』や『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、『1984』なんかもどんどんランク外にしています。いろいろランク外にしています。あくまで個人的なランキングという感じですのでよろしくお願いします。


それでは、
1位から順番にランキングを30位まで書いていきます。
(このランキングは、微修正していきます。)

★べスト1~ベスト10まで


1位

スティル・ライフ (中公文庫)

スティル・ライフ (中公文庫)

スティル・ライフ (中公文庫)

この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。


でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。たとえば、星を見るとかして。


星の話だ。ぼくたちはバーの高い椅子に座っていた。

この小説はとても綺麗な不思議な感覚の文体の小説です。著者の池澤夏樹さんが理工学部に在籍していたことから、理系的な文章の小説と表現されることもあるようです。主要な登場人物は2人だけです。僕と彼です。

彼は不思議な存在で、荷物は極端に少なくタクシーで引っ越しができるようなシンプルな生活をしています。染色工場で出会った彼と僕が触れ合い、深く現実的な行動を共にし、やがて二度と会うことはないさよならをして物語は終わります。「この世界は僕を入れる容器ではない」と気づかせてくれた特別な一冊。






2位

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

上下2巻
この本は、胸に突き刺さるようなコトバ、出来事でゆっくりと進んでいきます。登場人物に個性がはっきりと与えられ、「喪失からの再生」を重要なテーマとして丁寧に描いています。この本は内容の特殊性から読み手を選びます。恋人や親友を「若い死」で喪ったような実体験がある人だと深く刺さるかと思います。日常を揺さぶる「死」の感覚を幸運にもまだ知らない人にはこの小説に散りばめられたコトバが刺さることはないかも知れません。この小説の主人公「僕」は未成熟な年齢で親友と恋人を喪失しています。僕はこの作家のこの小説をとても大切にしていますが、その後読み漁った彼の作品については特に心を動かされたことはありません。『ノルウェイの森』については下記に、詳細な紹介記事を書いています。





3位

舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0)

「石炭をばはや積み果てつ」とか朗読していると心地よくて、暗誦したくなる。文章のコトバの響き・文体に高校時代の教科書ではまりました。完全に個人的な趣向なのかもしれません。この本は、舞姫うたかたの記・文づかいの三部作が揃っています。短編でありながら、起伏にとんだストーリーが展開されており、とても好きな一冊。主人公がふざけた男だとか、内容がくだらないとかいう批判があるのも納得している。でもそのことよりも、小説全体に流れるコトバの響きの魅力に僕は圧倒的に惹き込まれているのかなと思います。自分にとっては、日本の文豪全てのなかでNO.1の小説。





4位

バトル・ロワイアル

この本は知人に「面白いからあげる」ともらいました。貰った本を読むのはなぜか「面倒くさい」ので嫌いなのですが、これは面白かった。日本のこの種のサバイバルとかミステリーとか?純文学といっても別にいいような気がしますが、日本小説界の歴史に残ることが約束された本だと思います。以下は僕が特に好きな文章の抜粋。

俺たちみたいな凡人でも、ときどき、何もかもが無意味に思えることがある。なぜ俺は朝起きてメシを食っているのか。そんなもん食ったってそのうちクソになるだけじゃないか。なぜ俺は学校へ行ってお勉強なんかしているのか。それで万一将来成功したところで、いずれは死ぬんだ。いい服を着て、人の羨望を集めて、あるいは金をもうけたところで、何の意味もない。全く無意味だ。もっとも、このクソみたいな国にはそういう無意味さはふさわしいかも知れないがな。だが、しかし、だ。
俺たちには、楽しいとか、うれしいとか、そんなふうな感情もまた、あるはずだろう。ささいなことには違いないさ。だが、俺たちの虚無を埋めてくれるのは、それなんじゃないのか?少なくとも俺は、それ以外の答を知らない。




5位

水滸伝 一 曙光の章 (集英社文庫)

集英社文庫 水滸伝BOX (水滸伝)

集英社文庫 水滸伝BOX (水滸伝)

本編水滸伝19巻+楊令伝15巻+岳飛伝17巻の合計51巻

物凄く熱中して読めた。久しぶりに夢中になった一気読みの本。本当は岳飛伝で完結しますが、僕はあえて楊令伝で購入をストップしています。岳飛伝まで購入しても熱中できると思います。岩波文庫水滸伝は、本物的な水滸伝なのですがつまらない。北方水滸伝はオリジナル作品になっているようですがとても楽しめた。『三国志』や『項羽と劉邦』を上回るような面白さを感じました。入院したときや暇でしょうがない時にはオススメです。






6位

鬼平犯科帳(一): 1

全24巻+「鬼平犯科帳の世界」1巻(全25巻)

池波正太郎はとても面白いです。24巻は作者逝去のため未完の長編となっています。この作品は海外ではおそらく生まれない系統の小説というか、日本という文化的社会的背景があって成立している日本ならではの風情ある小説だと思います。江戸の盗賊改方になった鬼平こと鬼の長谷川平蔵が、妾の子供であるため複雑な幼少期を過ごし、荒れくれ者の顔役的な存在にまでなっていたのですが、父親の跡を継ぐことになり、江戸幕府から盗賊や放火犯や強姦魔を処罰する盗賊改方に就任します。犯罪を犯して反抗すればバッサリ日本刀で切り捨てます。日本の現在の死刑制度とはまったく違う爽快さがあります。東京の古い街並みの記述や食べ物屋さんの記述もたまりません。軍鶏鍋屋「五鉄」、「盗賊酒場」という名前の酒場、一本うどんなど読むと店に行きたくなります。お店に、盗賊や役人どもの密会を盗み聞きする返し戸などの仕掛けがあったり、鬼平以下で町人や商人や乞食に変装して盗賊どもの跡をつけてアジトを発見したり、世界観にどっぷり惹きこまれます。長過ぎる人生のお供になる粋な小説全集だと思います。






7位

三国志 (1の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)

文庫版三国志完結記念セット(全14巻)

文庫版三国志完結記念セット(全14巻)

全13巻+読本1巻(全14巻)

『北方三国志』がとても面白いです。グイグイ惹きこまれる筆力があり、とても気に入っています。「草原が燃えていた。」という書き出しから始まる物語。







8位

百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫 JA (6))

百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫 JA (6))

宇宙・地球の成立を太古の昔から描いていき、阿修羅王プラトン・イエス・シッダルタらを登場人物として混在させ、「世界の誕生・世界の終り・最果て・その先」に思考を掘り下げていきます。世界を深く思索することについて、著者自身があとがきで、考えたところで「認識論の虚無の暗闇に落ちこんでゆくだけだ。果してそこで思考を打ち切ってよいのだろうか」と述べています。

この小説は、世界の始まりの前や終わりの後、宇宙の外側といったものを真剣に思索してみた小説だと思います。SF小説とかたち上はなっていますが、実際には、著者の人生の巨大な疑問を壮大な思考・思索として残した偉大な作品だと思います。僕自身が、中学・高校生ころに授業で習う理科的な宇宙論・世界論に疑問を抱いており、このSF作家が僕が疑問を抱いていたものと同種の思考を作品化していたことには当時、深く感動しました。この小説でその疑問は解消されるものではありませんでしたが、同種の疑問を思考した人生の先輩がいたということは、「思考の孤独」を癒してもらえたような気がします。この小説は、荻尾望都さんが漫画にしています。現在出ている本だと小説ではないですが、サイモン・シンの『宇宙創成』が似た作用を少しだけ持っているのかなと個人的には感じています。

「絶対者」とは何か?それはあるのか?それはないのか?そういったことを思考したSF小説で、非常に貴重な名作だと思います。

寄せては返し
寄せては返し
返しては寄せる波の音は………




9位

ユートピア (中公文庫)

ユートピア』とは『どこにもない世界』のことです。本の名前は知っていても実際に読んだことがある人は少ないかと思います。この本が「約500年前」の思考であることは驚嘆に値します。意外に読み易く、遥か中世の人が、理想社会の成立に懐疑を抱きながらも発想を広げていたことに驚かされます。名作です。キリスト教の宗教性もしつこく感じませんでした。著者の独立した精神性によって書かれた文章だという側面が強いと思います。著者は別件で王の意に添わなかったことにより処刑されたそうです。





10位

太陽がイッパイいっぱい (文春文庫)

建設業青春小説です。『太陽がイッパイいっぱい』というタイトルが気に入って本を手に取りました。大学生の男の子が「マルショウ解体」という解体屋で本格的な建設業アルバイトをしながら、その業界の同年代と交流を深め、行きつけの飯屋の女の子と仲良くなり、元ヤクザの親方の苦労を知り、病気の子供を抱えていてサラリーマンを首になった中年男性中途従業員の悲しみをを知り、複雑な人間模様と悲しい人生の姿を体験していく過程を、明るい文体で描いています。この作家さんは、擬音の使い方がとても上手な作家さんです。暗さを明るさに転換しようと挑戦している小説だと思います。『厭世フレーバー』という作品も結構良いです。アマゾンレビューも参考になります。面白くて読み易い小説を探している方にはオススメです。










★ベスト11~ベスト20まで


11位

老人と海 (新潮文庫)

余計なモノを自分の世界から追い出したいときに、僕はこの小説を読み直します。僕はシンプルな小さい世界を描いた作品が好きです。登場人物は、「老人」と「老人を慕っている少年」と「カジキ」と「サメ」だけがメインでごちゃごちゃしていません。木船を出して海で漁をする年老いた漁師の小説です。老人の住んでいる小屋が小さくて物が何もないところや、生活も漁だけで成立しているところ、描かれている人間の生活や日常がことごとくシンプルなところが大好きです。シンプルな世界に生きる人間の生活を小さく切り取った物語。これが僕の『老人と海』という作品に抱いているイメージです。『老人と海』はノーベル文学賞受賞作品ですが、とても薄い小説なので気軽に読めます。『日はまた昇る』などの作品も読み易いとは思いませんが良かったです。




12位

デミアン (新潮文庫)

ヘルマンヘッセは日本で人気があるので『車輪の下』を読んでいる人は、結構いると思います。『シッダールタ』も静かな雰囲気で良い作品でした。デミアンの世界観が好きという訳でもないですが、デミアンのなかで、「卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない」という文章に僕は強く影響を受けました。自分の内面の一部を変えたいと強く思っていた時期にこのコトバは刺さりました。自分を狭い世界に閉じ込めている卵の殻を次々と破壊していきたいと思いました。「卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない」。





13位 

その女アレックス (文春文庫)

誘拐と殺人が絡んだストーリ。短い文体、細かな描写が乾いていて強烈に惹きつけられる。文章に非常な魅力がある本。残酷だが面白い。





14位

ボックス!(上) (講談社文庫)
ボックス!(下) (講談社文庫)

全2巻

百田尚樹は好きではないけれど、文章が上手い。ボックスはとても好きな小説です。高校生のアマチュアボクシング部を舞台にしています。とても面白い。ボクシング経験者や格闘技経験者だとかなり楽しめるし、未経験者でも問題なく楽しめると思う。個人的には繰り返し読んでしまう本の一つ。





15位

武士道シックスティーン (文春文庫)

女子剣道部を舞台とした小説。全国トップクラスの選手である主人公の世間ずれが面白い。





16位

八日目の蝉 (中公文庫)

これは良かった。良さを説明しにくいな。単純に説明すると、女が不倫相手の娘を連れ去り、逃亡するため各地を転々とします。その各地ひとつひとつに独特の世界観があります。女は誘拐犯ですが、誘拐犯と呼ぶ気にはなれない。様々な人間が様々な顔を持ち、綺麗な顔も汚い顔も持っています。そういった全てを上手に表現している作品で、一度手に取って読み始めれば、最後まで一気読みです。名作です。どこが良いとかではなくて、作品全体の持つ雰囲気がとても良いと思います。ただ、合わない人や駄目な人もいるようです。





17位

氷点(上) (角川文庫)

氷点(上) (角川文庫)

氷点(下) (角川文庫)

氷点(下) (角川文庫)

『氷点』はグッと惹き込まれます。高校生のときに読みました。僕は無神論者なので、宗教の押しが強いと駄目なんですが、キリスト教徒の三浦綾子さんの『氷点』は、キリスト教の押し付けを感じさせず、非常に素晴らしいと感じました。三浦綾子さんでもう一作有名な『塩狩峠』はキリスト教徒用の月刊雑誌で連載されたものらしく、信仰色が強く僕は違和感を感じました。『道ありき』という三浦綾子さんの自伝小説は、僕はキリスト教に全く興味ありませんが、心を打たれる小説の一つです。






18位

この本は、文章が高校生のときの国語の模擬試験問題で出てきて出会いました。結核で幼少期から成人するまで病院で過ごしてきた女性が、「みんなよりずっと遅れて病院から現実社会に飛び出る」ことになり、お父さんとブランコをしながら、「無駄になった長い年月」について会話する文章が問題文でした。その文章が何とも言えず、「この問題文を出した人は最高だ」と思いました。「無駄になった日々」の記憶は誰にでもあると思います。試験後すぐ本を買いに行きました。『ここに地終わり海始まる』というタイトルは、ポルトガルのロカ岬の碑文に由来するそうです。大航海時代の勇ましい気持ちを表しているのかな。「ここで、今までの大地での生活は終わる、今から海でのまったく新しい生活が始まる」。結核との闘いを終えて、成人となって病院を出て現実社会に挑もうとする女性の気持ちを重ねたタイトルだと思います。内容的には若干安っぽい感じのいまいちな展開もありますが、読むと強烈にポルトガル旅行したくなる不思議な小説です。宮本輝さんは『青が散る』という作品も大学生の日々を苦みと青々しさの混じった雰囲気で描いた名作かと思います。






19位

ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)

この小説の著者チャンドラーのセリフで有名なものに、翻訳によって様々にブレるのですが、「強くなくては生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」というものがあります。聞いたことがある人も結構いると思います。『プレイバック』という作品中のセリフだそうですが、作品中の翻訳はここまでカッコ良くはなく、作品自体もイマイチのようです。文体はハードボイルドの代表者(ヘミングウェイダシール・ハメットなど)の一人とされています。『ロンググッドバイ』はアメリカロサンゼルスを舞台に、世界大戦中のヨーロッパ・メキシコ・南米あたりまで登場人物の動きがあり、村上春樹がチャンドラーの文章を「寄り道の達人」とあとがきで褒めていますが、本当にそのとおりで、文章の軸と関係ないところまで面白く、何度も繰り返し読めるし、旅行などに持っていくのにも良い名作だと思います。この寄り道の文章が耐え難い人にはつまらない小説かと思います。ロールスロイスとかバーカクテルのギムレットがとてもカッコ良く登場します。





20位


モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

全7巻。

エンターテインメント。小説らしい小説だなあと思います。展開が豊かで、娯楽性に富んでいて、凄い嫌な奴が出てきて、小説の醍醐味が詰まった本。全7巻ですが、巻数が苦痛にならずに面白い(いや、本当は4,5巻で登場人物が急に増えて少し読むのが嫌になりました)。

「世界で一番面白い小説」と大袈裟に表現されることもある小説のようですが、その通りに面白い。著者は三銃士(「ダルタニャン物語」)でも有名です。『岩窟(牢獄)王』というタイトルの児童書がありますが、その原作が「モンテ・クリスト伯」だそうです。ナポレオンが生存中のフランスが舞台でナポレオンやルイ18世も登場します。主人公は、船乗りの「エドモン・ダンテス」。嫉妬や奸計により、婚約者との結婚式の最中に逮捕され、幸せの絶頂から突然海に浮かぶ牢獄に投獄されます、その年数は、十四年。主人公「エドモン・ダンテス」は思わぬ方法で脱獄し、伯爵の名を手に入れて、復讐のための隠れ蓑として『モンテ・クリスト伯』を名乗ります。物凄い大富豪として復讐を仕掛けます。なぜ大富豪になれたのかは説明を省きます。現代で例えると、世界一のお金持ちビル・ゲイツの財産を全部もらって、そのすべてを注いで復讐していくようなスケール感です。「世界で一番面白い小説」を読んでみたい人は本当かどうか確かめてみるもの良いかと思います。






★ベスト21~30まで位まで

21位

月と六ペンス (新潮文庫)

「月」とは遠くにあって決して届かないもの、「理想や夢」を意味する。
「6ペンス」とはイギリスの誰もが手にしている安い硬貨、「現実」を象徴する。

『月と6ペンス』には、そんな意味合いが込められているようです。

有名な画家ゴーギャンの人生を自伝ではなく、小説として「ストリックランド」という名前で彼を自由に構成して描いています。作者も語り手「僕」として登場人物のメインキャラになっています。イギリス・芸術の都フランス・タヒチが主な舞台となっています。絵画を軸に物語が流れるように描かれています。僕はこの小説は、「中野好夫さん」の翻訳が素晴らしいと思いました。この翻訳のおかげで、作品自体の叙情的な世界観を楽しむことがでました。






22位

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

この作品は、楽しいものではない。女性主人公キャシーが一人称で過去に起こった出来事を幼少期から、淡々と時に詳細にまたは静謐に独白していきます。舞台は創作上の架空世界。僕は、もし自分がこの架空世界の子供として生を与えられたら嫌だろうなと思いました。表紙デザインのカセットテープは、主人公の古い宝物。カセットテープから流れる音楽の一部に「私を離さないで」という英語の歌詞があります。誰が誰に「私を離さないで」と言っているのか、僕にはわかりません。作者が設定した架空世界を静かに受け入れることができる人はこの作品が好きになるかも知れません。





23位


城 (新潮文庫)

本文612ページで、全20章の未完作品です。著者が出版しないようにと伝えていたものが出版されてしまったものらしいです。カフカの3つの長編作品の最後の作品で最長のものです。物語は3日間しか描かれていません。この本の内容と新潮文庫の裏表紙の内容が一致していない。これは不思議・・。主人公は測量士だと説明されていますが、実際のところは、主人公は物語の舞台である村に定住するためにやってきただけで、奇妙な展開のなりゆきにより測量士を自称して、それ以後職業自称「測量士」となる、これが読み込んだ正しい内容です。かなり支離滅裂な展開なのですが、『城』というタイトルの響きがゲームのような感じで、僕は変なアドベンチャーゲームでも読むような感覚で読みました。登場人物が多いので付箋で整理しながら読みました。僕はカフカの「変身」はつまらないと感じましたが、この『城』にはゲーム的中毒性があり大好きな作品です。ただ、マニアックな文章と展開なので途中で読むのが嫌になる人も多いかと思います。







24位

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

この小説のキーワードは、人を自殺に向かわせる憂鬱などの毒「ヴィトリオル」を消失させるための医学の実験です。この本は100円で売っていたので、タイトルに惹かれて買いました。僕はスピリチュアルとか嫌いなので、この作家は好みではないのですが、海外有名作家の1人なので何となく買った本です。この小説のタイトルに興味がない人にとってはたぶん間違いなく駄作だと思います。タイトルに興味がある人でも微妙、実験的・模索的な一つの作品かなと思います。個人的には、この小説が描こうとしている内容が珍しいので違和感を感じる文章もありますが不思議と気に入っています。既に日本で映画化されている作品だそうです。
詳細は別に記事を書いているので省きます。






25位

宮本武蔵(一) (新潮文庫)
吉川英治 宮本武蔵 全8巻セット (新潮文庫)
全8巻

吉川栄治作品。熱中して読み切れます。この本は、若い時期に繰り返し読んでいました。漫画「スラムダンク」の作者さんが「バカボンド」として連載中ですが、その原作です。単純な佐々木小次郎との巌流島での戦いという作品ではありません。戦国時代から江戸時代と時代の流れの中で、大きな合戦が無くなり、武士として剣を振るう場所はなくなっていきます。そんな時代に宮本武蔵は生きました。僕が好きな箇所は、武蔵が育った地域で罰を受ける行いをして、お城の牢に1年間押し込められるのですが、その牢には様々な本が置かれており、武蔵は夢中になってそれらの本を読み漁ります。野獣のような武蔵が本を読み、人間が練られ、一回り大きくなって牢を出ます。僕はこのシーンが好きで、自分の無駄になったある時期に重ねて読んでいました。





26位
(この作品については、今後、司馬遼太郎作品に変更する可能性があります。また、島崎藤村「夜明け前」やスウィフト「ガリヴァ-旅行記」にも強い魅力を感じているので変更もありえます。)
ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

薄い小説で、読みやすいです。本文ですが、個人的に1ページ目だけは、2ページ目からの文章のための伏線で変な違和感があり面白くないかもと感じましたが、5ページくらい読むと作品の世界観に入り込めて一気読みできました。この本の良さは、あとがきで著者の山田詠美さんが書いていることにあるのかなと思いました。「私はこの本で、決して進歩しない(子供時代と比較して)、そして、進歩しなくても良い領域を書きたかったのだと思う。大人になるとは、進歩することよりも、むしろ進歩させるべきでない領域を知ることだ。」というあとがきの文章に個人的には共感できました。





27位

砂の女 (新潮文庫)

安部公房は海外ですごく読まれているようですね。日本よりも評価が高いような。『砂の女』は独特な世界観の名作です。安倍公房ワールドと表現するのが適切な世界観です。他の作家とは一線を画した独創的な文章が綴られています。『砂の女』では、主人公の男性が突然世間から失踪します。なぜかというと、休日に珍しい虫の採集のために砂丘的な場所に行くのですが、そこの集落の人間に砂の底にある家に騙されて押し込められるからです。その家には一人の女がいます。この女が『砂の女』です。といっても普通の女です。この不可思議な集落の人間たち、脱出できない主人公の男性、砂の女で物語は展開されます。変な世界。





28位

家族狩り〈第1~5部完結セット〉 (新潮文庫)
全5巻

『家族狩り』はテレビドラマを見て知りました。僕的にはドラマも視聴率は悪かったみたいですが面白かったです。こういった作品は「世に問われるべき作品」だと思います。家族狩りなので家族を殺していきます。ダメな父親を殺し、ダメな母親を殺し、ダメな息子を殺し、ダメな娘を殺し、家族狩りしていきます。崩壊に陥っている家族の命を狩っていきます。天童荒太さんの文章はポツポツというか淡淡というか、上手という感じはないんですが、それが作風にかえってあっているような感じです。





29位

ナイフ (新潮文庫)

重松清さんは文章がうまいなと思います。繊細な心理描写の文章を読み易く書く。ドラマの「とんび」を妻が泣きながら見てました。何かアマゾンレビューを見ていると全作品が良さそう。それも分かる気がします。この本は、短編集です。すべて、子供のイジメがテーマです。苦しい感じとか、そういうことはしちゃいけないよなとか、読んでいて静かに考えさせられます。この人は文章がうまいなと本当に思います。





30位

グレート生活アドベンチャー (新潮文庫)

表題作のほかにもう一遍「ゆっくり消える。記憶の幽霊」という作品がありますが、こちらも印象深い作品です。『グレート生活アドベンチャー』はちょっと変わった作品です。たぶん30代前半から40代中盤くらいまでの世代の男性だと「こういう文章を自分で書き殴ってみようと思ったことがあったかも」と思わず思ってしまうような内容の作品だと思います。主人公は駄目男で、彼女が一応います。正直、名作でも何でもありません。内容も薄いのですぐに読み終わります。しかし、何か手元に置いておいて何度か読み返したいかなと思う本です。変な小説ですが、好きな人は好きだと思います。僕は好きです。「ゲームのRPG世界感が現実に通用しなくて困ったなぁ」的小説です。説明しづらいので文章抜粋します。

・僕は東京に生まれた。ちょうど魔王のいる洞窟に入ろうとしているところ。
・僕たちは使い道に困るほどの大金を持っていた。しかし、金で買えるものはすべて手に入れていた。使い道がない。
・この世界の通貨Gは2億Gほど持っていても、ポケットを探ると1432円しかなかった。円とGの両替ができればいいのに。
このままあと60年くらい乗り切れないだろうか。










+α位

冒険者たち――ガンバと十五ひきの仲間

冒険者たち――ガンバと十五ひきの仲間

これは僕個人の記念碑的作品なのでランキングの最後に入れておきます。小学校低学年のときに、たぶん人生で初めて読んだ小説で、僕が読書好きになるきっかけになった本。全部で3部作あります。第1部の「冒険者たち」というタイトルが非常に好きで、子供用に1冊買ってあります。自分がネズミの仲間になったような感じでカモメに力を貸してもらったりしながら残酷なイタチ達と戦うドキドキ感がありました。特別な一冊。




-終了-
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