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小説『ベロニカは死ぬことにした』ーパウロ・コエーリョ

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

パウロ・コエーリョは読みたいと思っていたブラジルの小説家。

★「ベロニカは死ぬことにした」―あらすじ

パウロ・コエーリョは「アルケミスト―夢を旅した少年」が有名らしいけど、amazonレビューの低い方を見て購入はやめた。

何かしらパウロ・コエーリョの作品を一つくらいは読みたいと思っていた時に、古本屋で「ベロニカは死ぬことにした」というタイトルを見つけて、僕は表紙の絵がなかなか綺麗だったのと「死ぬことにした」という部分が面白いなと思って、108円だったので買ってみた。

実質248ページの中編小説。

本の裏表紙のあらすじ


ベロニカは全てを手にしていた。若さと美しさ、素敵なボーイフレンドたち、堅実な仕事、そして愛情溢れる家族。でも彼女は幸せではなかった。


何かが欠けていた。ある朝、ベロニカは睡眠薬を大量に飲んだ。だが目覚めると、そこは精神病院の中だった。自殺未遂の後遺症で残り数日となった人生を、狂人たちと過ごすことになってしまったベロニカ。


そんな彼女の前に、人生の秘密が姿を現そうとしていた―――。

パウロ・コエーリョは精神病院に3回入院経験があるらしい。それでも作家としては世界的に成功している。
http://www.porgoru.com/wp-content/uploads/2013/09/Paulo-Coelho.jpg


★小説の始まり

舞台は小国スロベニア。旧ユーゴスラビア分断後の5つの共和国の一つ。首都はリュブリャーナ。その小国で生きている若い24歳の女性ベロニカが主人公。

一九九七年十一月、自殺する時が”ようやく!”来た、とベロニカは確信した。修道院に間借りしていた自室を入念に掃除してから暖房を切ると、歯を磨いて、横になった。

ベロニカは睡眠薬の多量摂取(オーバードーズ)での自殺を選択した。
(小説の発行は1998年で古い)


彼女が死にたいという選択の裏には、簡単な理由が二つあった。

一つ目の理由は、彼女の人生そのものが代わり映えせず、一度若さを失ってしまえばずっと下り坂になることだ。
二つ目の理由は、より哲学的なものだった。

でももう少しで、彼女は今までとは大きく違う、『人生最後の体験』をすることになる。『死』という体験を。

「わたしはいないと思うけど、もし神が存在するなら、人の理解には限度があることを知っているだろう。この貧困、不公平、強欲、孤独の混乱を創り出したのは神だ。」

全てが独創性を失い、来る日も来る日も同じような、繰り返しばかりの、悲しい人生に変貌していくのなら、これから30年、40年、50年も同じものを見なくて済むことの方が、もっと嬉しかった。

人生でしたいことをほとんどやり遂げた時、彼女は、自分の存在にはもう意味がないという結論に達した。毎日が同じだからという理由で。そして彼女は死ぬことにした。

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★精神病院での生活

「ヴィレット」という国立の精神病院にベロニカは搬送される。
「ヴィレット」における登場人物
イゴール医師(「ヴィレットの院長」)
・ベロニカ(主人公)
・ゼドカという女性入院患者(「鬱病」ーわたしの問題は、ある化学物質が欠けてることなの)
・マリーという女性入院患者(元弁護士として40年間勤務、「パニック障害」、発症により離婚)
・エドアードという男性入院患者(28歳、外交官の息子、絵画を学ぶ、”分厚すぎる本”により神秘家に興味を持つーそれらから得た世界観を『楽園のビジョン』と表現している)

ベロニカは自殺に失敗し、代償として五日間集中治療室にいて、病棟で二週間ほど夢と現実との狭間で眠りつづける。そして告知される。睡眠薬摂取が引き起こした昏睡状態により、あなたの心臓は回復不能なほど傷ついた。

心室が壊死した。五日以内、長くて一週間で死ぬ。」

今度は死を待たなければならなかった。しかも予約済みの死を。

ベロニカの「長くて一週間で死ぬ。」という自殺未遂の代償となった余命は病院関係者を通じて精神病院内の患者らに知れ渡る。自死を意識する患者も多い中で、「死」のタイムリミットが決定してしまったベロニカの存在は、彼ら患者に動揺や憐憫、その他様々な影響を及ぼす。

この様々な影響を受けた患者たちとベロニカの交錯が物語の描写の中心をしめる。


★若干、違和感のある部分

神の概念(肯定的ではない)・スーフィズムなどの信仰、思想が物語に織り込まれ、それらに対する信仰や興味の有無が若干小説全体の読み辛さを左右する。

女性のオーガズムに関する記述も複数回にわたり、無意味な性的描写が少し多く、その記述に必要性は見いだせない。著者との世界観のズレに、読む上での違和感が多少生じる。しかし、読みにくい小説ではない。


(日本で映画化されていたみたいですね)


★この小説のキーワード:『ヴィトリオル』という毒

精神病院の院長のイゴール博士は狂気の原因だとして「ヴィトリオル」という毒を想定していた。そして、その毒に対抗する方法を模索していた。その方法が見つかれば、歴史に名が残る。

「ヴィトリオル」という毒は、「憂鬱」ということもできる。

イゴール博士は、ベロニカを実験対象として選択し、その経過から彼なりの解答を得る。

イゴール博士はノートを取って、テーブルの上に載せると、メモを取り始めた。少ししたら、彼は必要なメモを書き、、唯一の「ヴィトリオル」の治療法を解説するだろう。生への意識だ。そして患者への最初の大きなテストに用いた薬を説明した。死への意識だ。


イゴール博士は知っていた。自殺未遂の人間が、またいつか同じことを繰り返すことも。


どうしたら、ベロニカの体内からヴィトリオル、または憂鬱をなくすことができるだろうか、モルモットとして使ってみたらどうだろうか?


その結果、イゴール博士は計画を思いついた。


フェタノルという薬を使って、彼は心臓発作の効果をシュミレートすることができた。彼女は一週間、その薬を注射された。死について考え、自分の人生を振り返る時間があっただろうから、彼女はとても怖かっただろう。


彼女は、体内から完全に「ヴィトリオル」を排除してしまったので、二度と自殺を繰り返すことはないはずだった。


少しの間、彼はまた一つの疑念に襲われた。遅かれ早かれ、ベロニカは自分が心臓発作で死なないことに気づくだろう。


いつかやってくる死への恐怖と共に、彼女が生きていかなければならない日々についてはどうだろう?


イゴール博士は長いこと、一生懸命思いを巡らしてから、それはべつにどうでもいいことだという結論に達した。


わたしたち、はかない存在の毎秒毎秒に起こり得る、たくさんの予期せぬことを考えれば、実際にそうだろう。

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